どちゃ楽 Q.142 (1),(2)

Q.142

(1) 19で割って14余る平方数は存在するか?☆4

(2)\dfrac{2a^{2}-1}{b^{2}+2} が整数になる整数の組$(a,b)$は存在するか?☆9

ポイント

平方剰余の応用問題として出題しています。 必要ならばルジャンドル記号を駆使して考えましょう。

ルジャンドル記号の諸性質

$a$が素数$p$と互いに素であるとき,$(\mbox{mod} p)$において平方剰余であるならば $\left(\dfrac{a}{p}\right)=1$ 非平方剰余であるならば $\left(\dfrac{a}{p}\right)=-1$ と定義する。また,$a$が$p$の倍数ならば $\left(\dfrac{a}{p}\right)=0$ と定義する。(← この0という定義を用いて計算するようなケースはほとんど無く,そのため他のところではこの定義自体が無いときもありますが,こうしておくとその他の性質を統一的に述べることができるのでこうしておきます)

  • $(\mbox{mod} p)$における等価性

整数$a,b$に対して, $a\equiv b (\mbox{mod} p)$ ならば $\left(\dfrac{a}{p}\right)=\left(\dfrac{b}{p}\right)$

整数$a$に対し, $\left(\dfrac{a}{p}\right)\equiv a^{\frac{p-1}{2}} (\mbox{mod} p)$

  • 乗法性

整数$a,b$に対して $\left(\dfrac{ab}{p}\right)=\left(\dfrac{a}{p}\right)\left(\dfrac{b}{p}\right)$

  • 平方剰余相互法則

異なる奇素数$p,q$に対して $\left( \dfrac{q}{p}\right)\left(\dfrac{p}{q}\right)= (-1)^{ \frac{p - 1}{2}\cdot\frac{q - 1}{2} }$

  • 平方剰余第1補充則(オイラー規準で$a=-1$としたとき) $\left(\dfrac{a}{p}\right)=(-1)^{\frac{p-1}{2}}$

  • 平方剰余第2補充則

$\left(\dfrac{2}{p}\right)=(-1)^{\frac{p^{2}-1}{8}}$

解答(1)

乗法性と第2補充則より

$\left(\dfrac{14}{19}\right)=\left(\dfrac{2}{19}\right)\left(\dfrac{7}{19}\right)=(-1)^{\frac{19^{2}-1}{8}}\left(\dfrac{7}{19}\right)=-\left(\dfrac{7}{19}\right)$

相互法則より $\left(\dfrac{7}{19}\right)\left(\dfrac{19}{7}\right)=(-1)^{3\cdot 9}=-1$

また,$\left(\dfrac{19}{7}\right)=\left( \dfrac{5}{7}\right)$ で,$(\mbox{mod} 7)$ の平方剰余は$0,1,4,2$ なので $5$ は非平方剰余だから $\left(\dfrac{5}{7}\right)=-1$

よって,$\left(\dfrac{7}{19}\right)=1$ を得るから $\left(\dfrac{14}{19}\right)=-1$ となる。

ゆえに 19で割って14余る平方数は存在しない。

解答(2)

分子の$2a^{2}-1$は奇数で,分母の$b^{2}+2$も奇数でなければならない。そのとき,$b$も奇数である。$b^{2}+2$は常に2以上であるから,素因数がいくつか存在する。

$b^{2}+2$は奇数だから,素因数分解では奇素数のみが現れる。$b^{2}+2$の素数$p$($\neq 2$)について,素因数分解したときの指数が$i_p$であるとする。$i_p$は非負整数である。次に,

$S=\displaystyle\sum_{p\equiv 1 (mod8)}i_p$

$T=\displaystyle\sum_{p\equiv 3 (mod8)}i_p$

$U=\displaystyle\sum_{p\equiv -3 (mod8)}i_p$

$V=\displaystyle\sum_{p\equiv -1 (mod8)}i_p$

とおくと,$b^{2}+2\equiv 1^{S}3^{T}(-3)^{U}(-1)^{V}\equiv(-1)^{U+V}3^{T+U}(\mbox{mod} 8)$ であり,一方で $b$は奇数だから $b^{2}+2\equiv 3(\mbox{mod} 8)$ となるので,$U+V$は偶数, $T+U$は奇数,である。 よって,$T+U>0$ だから $b^{2}+2$ には $p\equiv 3 (\mbox{mod} 8)$または$p\equiv -3 (\mbox{mod} 8)$を満たすような素因数が少なくとも1つ存在するといえる。このような$p$のうちの1つを$q$とおき,

$a$をどのように取っても $2a^{2}-1$ は$q$の倍数にならないことを示す。

$2a^{2}-1\equiv 0 (\mbox{mod} q)$ は $a^{2}\equiv \dfrac{q+1}{2} (\mbox{mod} q)$ となるから,$\left(\dfrac{\frac{q+1}{2}}{q}\right) =-1$ を示せばよい。

$\left(\dfrac{\frac{q+1}{2}}{q}\right)\left(\dfrac{2}{q}\right)=\left(\dfrac{q+1}{q}\right)=\left(\dfrac{1}{q}\right)=1$

よって $\left(\dfrac{\frac{q+1}{2}}{q}\right)=\left(\dfrac{2}{q}\right)=(-1)^{\frac{q^{2}-1}{8}}$

$q\equiv \pm 3(\mbox{mod} 8)$ のとき,$q=8k\pm 3$ ($k$は非負整数) とおいて

$\dfrac{q^{2}-1}{8} = \dfrac{(8k\pm 4)(8k\pm 2)}{8}=(2k\pm 1)(4k\pm 1)$

この値は奇数であるから,

$\left(\dfrac{\frac{q+1}{2}}{q}\right)= (-1)^{\frac{q^{2}-1}{8}} =-1$ となる。

以上より $2a^{2}-1$が$q$の倍数であるような整数$a$は存在しない。

このような$q$により,$2a^{2}-1$ は $b^{2}+2$ の倍数でないので題意は示された。

コメント

(1)の問題もまあ$(\mbox{mod} 7)$で5が非平方剰余のところでやったように全て列挙すれば済む話なのですが,まあルジャンドル記号の紹介という形でそれを何回か利用した解答としています。(2)はかなり難しいですが,ルジャンドル記号の扱い方に慣れると議論が進みやすくなりますね。

続き (3): http://limrim-soeasymath.hatenablog.com/entry/2017/12/03/224725