どちゃ楽 Q.2 「正の約数の総積」

Q.2 正の整数$n$の正の約数の総積を$P(n)$とする。

(1) $P(n)=24^{240}$となるような$n$は1つだけある。$n$を求めよ。[JMO予選 2012] ☆3

(2) 実は,$m\neq n$ ならば $P(m) \neq P(n)$ である。このことを示せ。[自作] ☆8

この問題のツイート: https://twitter.com/so_easy_math/status/934993669496512512

ポイント

一般に $d$が$n$の正の約数ならば $\dfrac{n}{d}$も$n$の正の約数です。$P(n)$を考えるとき,この性質が重要となります。

解答

$n$の正の約数の個数を$D(n)$とする。$d$が$n$の正の約数全体を動くとき,$d$の総積$P(n)$は,$\dfrac{n}{d}$の総積に等しい。

$\dfrac{n}{d}$の総積は,分母は$n$が$D(n)$個で$n^{D(n)}$, 分子は$P(n)$だから,$\dfrac{n^{D(n)} }{P(n)}$ となる。

よって $P(n)=\dfrac{ n^{D(n)} }{ P(n) }$ より $P(n)^{2}=n^{D(n)}$ となる。

(1) $P(n)=24^{240}$として $n^{D(n)}=24^{480}=2^{1440}\times 3^{480}$

$n$の素因数は2,3のみなので,**正の整数$a,b$を用いて $n=2^{a}3^{b}$と表され,このとき $D(n)=(a+1)(b+1)$と表される。

よって,

$n^{D(n)}= 2^{a(a+1)(b+1)}3^{b(b+1)(a+1)}=2^{1440}\times 3^{480}$

$a(a+1)(b+1) : b(b+1)(a+1) = a:b = 1440:480=3:1$ より$a=3b$だから

$3b(3b+1)(b+1)=1440, \,\, b(b+1)(3b+1)=480$

となり,$b=5$ のみが適する。$a=15$ より $n=2^{15}3^{5}$

(2) $P(n)\neq P(m)$は, $n^{D(n)}\neq m^{D(m)}$ と同値である(両辺は正であるから)。$D(n)\le D(m)$ としても対称性は失われない。

異なる$n,m$で $n^{D(n)}= m^{D(m)}$ が成立すると仮定する。

$n=1$のとき $m^{D(m)}= 1$で,$m\gt 1$では右辺はある素数の倍数なので,等号が成立しない。(1は任意の素数の倍数でない)

$n>1$のとき,$n$には素因数が存在し,その素因数の種類は$m$の素因数の種類と一致する。

$p$を$n$の任意の素因数とし,$n$が$p$で割り切れる最大の回数を$f_{n}(p)$とおく。このとき,$n^{D(n)}$ が$p$で割り切れる最大の回数は$D(n)f_{n}(p)$ であり,$n^{D(n)}= m^{D(m)}$が成り立つならば, $D(n)f_{n}(p)=D(m)f_{m}(p)$が成り立たなければならない。

ここで $D(n)\le D(m)$ より

$D(n)f_{n}(p)=D(m)f_{m}(p)\ge D(n)f_m(p)$ が成り立ち,$D(n)\gt 0$ より

$f_{n}(p)\ge f_{m}(p)$ である。これが任意の$n$ ( $m$ )の素因数$p$について成り立つので,任意の$n$ ( $m$ )の素因数に対して,$n$が$p$で割れる最大の回数が, $m$が$p$で割れる最大の回数以上になるため,$n$は$m$の倍数になる。このとき,$n$は$m$の約数をすべて約数として持っているから $D(n)\ge D(m)$

$D(n)\le D(m)$としていたから $D(n)=D(m)$

よって $n^{D(n)}= m^{D(m)}$ は $n=m$ となり,$n\neq m$ に矛盾する。よって,背理法により $n\neq m$ ならば$P(n)\neq P(m)$ であることが示された。

コメント

なんと$n$によって$P(n)$の値は異なるんですって。つまり$\mathbb{N}$から$\mathbb{N}$への単射ですね。(1)の実際の問題文は「$n$を""すべて""求めよ。」となっていましたが,それにも関わらずただ1つであったことに私は(2)のような疑問を持ち,この性質を発見するに至りました。